部屋のドアに、自己紹介を添えた学生の顔写真がびっしりと貼られている。
「学生支援スタッフの写真です。発達障害の学生も、支援を受けるだけでなく、他の障害学生を支援する側に回っています」。 障害学生支援コーディネーターで臨床心理士の佐藤亜弥さん(39)が説明してくれた。
同大は、日本学生支援機構が実施する障害学生修学支援ネットワーク事業の拠点校として、支援プログラムを開発する役割を担う。 2009年に同支援室を開設して以来、障害学生を有償でサポートする学生支援スタッフの養成に力を入れてきた。
現在のスタッフは約40人。 パソコンによるノートテイクや教材への字幕挿入など様々な支援を行い、時給760円の報酬が支払われる。 有償にする理由を、佐藤さんは「支援する側には責任感が生まれ、支援を受ける側は遠慮せずに要求を伝えられる。学生が学内でアルバイトをする場にもなる」と強調する。
支援の内容は、障害学生が所属する課程の教員らで構成する「障害のある学生の支援懇談会」で決める。 支援室開設当初は、主に聴覚障害を対象にしていたが、間もなく発達障害への対応も迫られるようになった。
「発達障害は見ても分かりにくく、本人も認識しづらい。どこまで支援するか、見極めが難しい」。 支援室長の中村貴志教授(50)(障害科学)は話す。
発達障害の学生にとって大きなヤマ場となるのが教育実習だ。 本人の同意を得た上で実習先の校長や担当教員と情報交換し、伝達事項を口頭だけでなく文字で伝えるなどの配慮を依頼したりする。 中村教授は「教師になりたい気持ちと求められる適性をどうすり合わせていくかが課題だ」と明かす。
卒業後、一般企業に就職することが多いが、そこでは必ずしも十分な支援が準備されるわけではない。 必要な支援を得るために自分から働きかけなければならず、そのためには自分の障害の特性を理解し、伝える力も求められる。
「自立のためには、いかに支援しないかという視点も必要なのです。社会に出てから受けられない支援を大学ですると、本人のためにならないこともある」と佐藤さん。 支援の場は、支援を受ける難しさを学ぶ場にもなっている。(保井隆之)
日本学生支援機構が大学などでの障害学生の修学を支援するため、2006年度から始めた。 全国8地域の大学を拠点校とし、国立特別支援教育総合研究所など3協力機関も交えてネットワークを構築。 相談、研修、研究促進事業に取り組んでいる。 福岡教育大は九州地区の拠点校。 |
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